こんにちは!Curieです。
ラグビーW杯2019の準決勝で、王者ニュージーランド下して勝利を勝ち取ったイングランドに驚いたのは私だけではないはず。
イングランドを率いるのは、前回大会では日本代表のHCだったエディ・ジョーンズ氏。
2015年まで過去20年以上、W杯で1勝しか挙げたことのない日本が、強豪南アフリカを倒すという素晴らしい成績に貢献した名将です。
「エディ・ジョーンズすごい」という声がたくさん上がっている今、彼のラグビー哲学や指導方法、名言などをここにまとめていきたいと思います!
Contents
エディ・ジョーンズのラグビー哲学
徹底的な論理主義
「自信が持てないという人がいますが、理由は簡単です。準備不足なのです」
「勝利については、確実に言えることがあります。それは、勝利は得ようと強く意識しなければ、決して得られないということです」
出典:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53680
これらの言葉から、ジョーンズHCは徹底的に根拠を提示する論理主義者であることが伺えるでしょう。
彼がまず考えるのは目標であり、ヴィジョンを明確化することです。
あくまでもその後に、道筋(練習スケジュール)を立てます。
そして節目ごとに見直し、さらに良い方法を探究できれば、必ず目的地に到達できるはずだという考え方をします。
「練習というものは、逆算して計画されるべきもの。チームをどうやって勝たせるかを決めたら、そのための最善の方法、環境を事前に計画していく」
出典:Wikipedia
非常にシンプルですよね。
しかし、そのようにとても公正な反面、ストイックで厳しいのです。
彼はチームの練習をハッピーにしないことにしていました。
えっ?と思ってしまいますが、実はこれは敗者のメンタリティなんだそうです。
「一生懸命やったんだから、負けてもいいじゃないか」
「頑張った結果だからいいじゃないか」
これらの考え方はハッピールーザー(幸福な敗者)と呼び、彼は就任してからまずこの意識改革をすることから始めました。
この点で、選手の意見を取り入れる現HCジェイミー・ジョセフ氏とは大きく違いますね。
何よりも大事なのは「自信」
弱いチームの根拠を突き詰めていくと、結局「自信」なのだそうです。
ジョーンズHCによれば、勝つためには「勝ちたい」と強く思わなければそれを得られないし、そのために必要となる自信は「準備と努力の貯金」でしかありません。
つまり、自信のなさ=準備不足であり、勝利への意志を反映する「対策を練る」という行為が自信を育むのだそうです。
それは相手の先に立とうという意志であり、負癖のあるチームには少しも見られないのだとか。
ジョーンズHCは、日本チームの敗者のメンタリティが形成される背景・原因を分析しているため、日本人の特性や文化に非常に詳しいです。
日本人は従順で真面目だけれども、失敗を極端に恐れたり、自己肯定が難しいのはなぜなのか。
彼は日本が農耕民族だった歴史的な背景や、日本教育にそれを見ています。
しかし、できない理由を探すよりも、何ができるのかを考えるのがジョーンズHC。
日本人の我慢強さや勤勉性は世界一だと言っています。
そこで彼は、意思決定が弱い代わりに要求すればするほど応えようという意識が高いのを利用して、世界に類を見ないハードワークをチームに求めました。
彼の流儀は「強みを知り、強みを伸ばすこと」。
自信がないなら、日本流で自信をつければいい、というのがジョーンズHCの考えです。
ユニークさの活かし方
海外の強いチームの模倣ではなく、日本人特有の個性を生かし、きちんと準備をすることを徹底したジョーンズHCですが、
彼が世界の名将たるゆえんは、選手一人一人に対する洞察力でもって、彼らの能力を最大限に発揮させる手腕にあります。
選手を成長させるためには、選手のことを正しく理解し、それに合った方法で少しの不安や緊張感を与えることだと彼は考えています。
- 引っ込み思案でチームに馴染めない選手にはレギュラーに抜擢し、より積極的にコミュニケーションを測らなければならない状況を作る
- レギュラーの選手から少しでも過信や慢心を感じれば、容赦無くレギュラーから外す
- 選手間のコミュニケーションが希薄であれば、コミュニケーション増加のために食堂内での携帯電話の使用を禁止
こういった揺さぶりをかけることで、あえて選手にとって居心地の悪い環境を一時的に用意し、選手が100%安心しないように心がけていたそうです。
厳しいですが、選手の心をもてあそぶのでもドSということでもなく、「居心地がいいと能力は発揮できない」、「ハッピールーザーにはしない」という彼の考えによるものです。
又、ジョーンズHCは日本人の小さい体をラグビーで勝てない言い訳にはさせませんでした。
機敏で”賢く動く”ことを身につければ勝てる要素が勝ると、バレーボールなど他のスポーツで分析していました。
体格やフィジカルで勝てないという先入観を変えるために、一日2回とされる練習セットも3回に増やし、
走力を徹底的に鍛え、体を当てながらボールをパスとランでスペースに運ぶ練習を繰り返したそうです。
体格に恵まれている選手に対しては、体重の増加によってスピードが落ちるという危惧をも乗り越えさせるような、世界の激しい当たりに負けずに走れる強靭な体をつくるよう粘り強く指導しました。
不利を利点にすることと、利点を伸ばすこと、そして負け癖を許さないことが、同時進行しているんですね。
気合いは意味がない
ジョーンズHCにとっては、日本の学校の運動部にある「熱血青春文化」は”馬鹿げている”そうです。
学生ラグビーで、試合前にロッカールームで大泣きしたり、試合中に「気持ち!気持ち!」という掛け声を上げたりして気持ちを高ぶらせることに関しては「ナンセンス。その”気持ち”なるものが試合でどのぐらい保てるか。5分か10分程度だろう」と切り捨てている。ジョーンズ曰く、精神状態の一貫性を保つには、ゲームですべきこと明確にしておく必要もあるという。
出典:Wikipedia
徹底的に根拠を求める彼にとって、勝利の要因は気合ではなく、準備でしかありません。
モチベーションは長く続かないものと最初から割り切り、いかに感情の振り幅を小さく保つか、スランプに陥ったときにどう対処すればいいのかを明確にし十分に準備しておくことが、彼のやり方です。
彼の話によると、人は自分のできることを忘れてしまいがちで、何ができるのか・何に特化しているのかに集中できなくなった時がスランプなんだそうです。
簡単なことをきちんとできるように基礎に立ち戻らせ、それがさらによくなるためにつくり変える。
それが選手の”強さ”となり、それをちゃんと思い出せるよう、そこに集中させるのが自分の仕事だと言っています。
自分と向き合う
そのためには自分の強さ、弱さを理解するリーダーが必要で、その弱さを理解し、補い、強みに変えるような環境づくり(人間関係)が大切なのだそうです。
その上で、最初に掲げた目標を達成するために、常によくなろうという意識を忘れないこと。
今よりよくなるとは、今の自分を変える努力をするということで、ジョーンズHCはそれがどれだけ人間にとって困難かをよく理解しています。
楽なことと面倒なことが誰にでもありますが、多くの人は楽な方を選びがちです。
目標までの道のりは大抵長いものなので、その意識は見失い安く、不安や迷い、気の緩みが生じてしまいます。
その上で、面倒でも自分が変わる必要があることを認めなくてはならないと強く言い続けます。
それを認めるためには、自問自答をするしかないそうです。
さぞかし苦しい時期になるだろうと思いますが、それでもジョーンズHCは、それを十分に理解した上で、未来に向かっていくよう求めます。
彼は自問自答する大切さを理解しているので、選手の苦しい時期を蔑ろにすることは決してありません。
内面にまで及ぶ観察力と、ブレない厳しさと深い愛情に満ちたコーチなんですね。
とにかくやってみる
何事もしっかり考えることは必要だと認めながらも、とにかくやってみることも大事だとジョーンズHCは言います。
「最大のリスクは、リスクを取らないこと」で、何事においても成功するためにはリスクをとることは不可欠なのだそうです。
リスクの中にしかチャンスはなく、そのチャンスをものにできるかどうかは本人次第なのだとか。
一度チャンスをものにすると、次々とチャンスが巡ってくるので、ステージがどんどん上がっていくのだそうです。
何かを大きく変えようとする時、人は躊躇してしまうものですが、実際にはそこにはなんの障害もないと気づく必要があるとジョーンズHCは言います。
「自分にはできる」と強く信じ込むことと、自分のことを十分に把握したら過去は過去とサッサと切り捨てることが、リスクをとるコツのようです。
独断で厳選した名言
その1
「変われない理由はない」
短いですが、ジョーンズHCが言うことによって言葉の重みと迫力が何倍にもなりますね。
徹底的に根拠を求め、準備が全てと断言する彼には、言い訳は一切通用しません。
「変われない理由はない」と言うことは、つまりどんなチームも勝てる可能性があるということです。
この一言には、ジョーンズHCの頼もしさと厳しさが端的に表れていますね。
その2
「全くストレスを受けないチームは成長などせず、現状維持が続くだけ」
「何か特別なことに関わることは、自分が変われるということ」
「勝つことが目標ならば行動を変える必要があります」
「行動を変える為には極端な事をしなくてはいけません」
日本ラグビーは、かつて世界的に弱いチームでした。
このことはジョーンズ氏にとって、日本ラグビー界に大きな変化をもたらす特別に大きなチャンスであると同時に、
それが失敗すれば、その後の彼のキャリアに大きな爪痕を残し、一生大きなコーチの仕事が巡ってくることはないでしょう。
歴史的な変化をもたらした彼の覚悟が、この名言から読み取ることができますね。
その3
「私が成し遂げたかった最大の目標は、日本代表が代表のジャージーに誇りを取り戻し、ファンが誇りを持って応援することだった。それを成し遂げた選手たちを誇りに思う」
これは・・・泣けますね・・・!(T□T)
彼の最大の目標は、日本チームやファンが、希望と自信を取り戻すことだったんですね。
スポーツの素晴らしさはけっして一言では語れませんが、ここにその一部がしっかり詰まっているのではないでしょうか。
冷徹で厳格なイメージがあるジョーンズHCですが、実は本当に熱い漢であるのがわかりますね。
コーチング・キャリア
ジョーンズHCはオーストラリアタスマニア州出身の元ラグビー選手で、現役時代はフッカーとして活躍していました。
ニューサウスウェールズ州代表に選出された過去を持っていますが、オーストラリア代表のワラビーズでプレーしたことはないそうです。
1992年シーズン(当時32歳)で現役を引退しました。
彼はシドニー大学の体育学で教育学士を取得しており、コーチに転身するまでは教員として体育を教えており、1994年はシドニーの「インターナショナル・グラマー・スクール」の校長を務めました。
1995年に初来日してから、彼のコーチングキャリアは以下の通りです。
- 1996年 東海大学ラグビーフットボール部監督就任
- 同年ラグビー日本代表フォワードコーチ兼任
- 1997年 サントリーサンゴリアスフォワードコーチ就任
- スーパーラグビーブランビーズHCに移籍
- 1999年 オーストラリアン・バーバリアンズHC兼任
- 2001年 オーストラリア代表ワラビーズHC就任
- 2005年 成績低迷によりワラビーズHC解任
- 同年レッズ(オーストラリア)HC就任
- 2007年 南アフリカ代表スプリングボクスチームアドバイザー就任
- 2008年 サラセンズ(イングランド)HC就任
- 2009年 サントリーサンゴリアスGM就任
- 2010年 同チームHC兼任
- 2012年 ラグビー日本代表サンウルブズHC就任
- 2015年 ストーマーズ(南アフリカ)就任
- 同年イングランド代表レッドローズHC就任
ジョーンズHCは2001年にオーストラリア代表のHCに就任し、2007年W杯終了までの契約だったのですが、2005年シーズンなんと9戦8敗と大敗したことを受けて任期半ばで更迭された過去があります。
ワラビーズでの通算成績は57戦33勝23敗1分で、解任後レッズのHCに就任するも14チーム中最下位の成績を残し、酷評されたそうです。
今でこそ素晴らしいと評価されていますが、ずっとそうだったわけではないんですね。
著書
ジョーンズHCはいくつか書籍出していますが、その中でも評価が高いのは以下の2冊です。
- 『ラグビー元日本代表ヘッドコーチとゴールドマン・サックス社長が教える 勝つための準備』(講談社、2017年)
- 『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』(講談社、2018年)
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まとめ
いかがでしたか?
今回は元日本代表HC・現イングランド代表HCのエディ・ジョーンズ氏について調べてみました。
彼のマインド・セットはビジネスにも通じるものがあるので、スポーツのみならず多くの分野で参考になると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
南アフリカ代表HCエラスムス氏のラグビー哲学についてはこちら。
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